農家の目線から
農園を継ぐことになり、鍼灸マッサージの治療院をワンオペし、その上で農業を行う事は至難の業です。しかしながら食息動考の概念は切っても切り離せません。
人間は働くことを余儀なくされ、また先祖代々の家を守るという古めかしい使命を長男が引き継ぐ制度は徐々に衰退しつつありますが、農地は農家にしか売ることが出来ず、その結果として売れないからには農地をほったらかしにして置く訳にはいかずに、半ば強制的に土地を引き継ぐことになる訳です。
今まで自分は家庭菜園程度の事はやってきた経験上、雑草は無農薬でも育ちますが、おいしくありません。野菜は堆肥を入れて甘みを作り出して収穫します。
つまり家畜の糞の成分を人間は美味しい美味しいと言って食べる訳ですが、何とも不思議な話です。
家畜の糞や化学成分を植物に吸収させて甘味・旨味に変換させ、それを収穫し人間が命を紡いでいくという循環サイクルは、太古の昔よりうまく成り立ち、人間はその一部であり、死んだら灰となり窒素成分やリン酸、カルシウム分として土に戻されていき、樹木の生長に役立っていきます。人間も動物も死んで灰になり植物の一部になり、その植物はまた人間に採取され糞となるのです。
面白い目線ですよね。
現代ではそのサイクルに少し異変が起こりつつあります。
人口増加、長寿化により、植物や家畜が大量に必要になってきている訳ですが、天然のものを食べる機会が徐々に少なくなりつつあります。
チーズですら人工合成物を混入させてコストを抑え、ハンバーガーなどでは嵩マシの為に段ボールクズなどが混入され、肉に至っては色が変色したものでも赤色色素を浸みこませて再販売するなど偽装食品問題も日本のみならず、中国を始め新興国では当たり前になろうとしています。しかし面白いことに、日本人は珍しい商品があると、それらを輸入して食べています。こんな闇の食品を食べて健康になれるはずがありません。
健康になりたいのであれは、まずは最低でも使用した農薬や堆肥の銘柄などを知り、その上で覚悟して購入する必要があります。
無農薬や自然栽培と云う、一見尊いやり方に誘導されてしまいますが、それには相当の苦労があり商品単価としては高くつきます。お金持ちの道楽のようなものです。
動物の堆肥を土に漉き込ませて、普通に栽培する方がコスパが良いと思います。
その食品を食べる事を前提に健康を考えていく必要があると思うのです。
筋肉を構成する蛋白質・そしてエネルギーを作り出す炭水化物・必要なミネラル分・そして水分です。
タンパク質は肉や魚の他に卵などもありますから、肉体を維持し続けていく上ではどれかの摂取が必要になります。炭水化物は米などが吸収に時間がかかるので糖尿病予防には役に立ちますが、小麦粉や蕎麦のように粉から作る製品は血糖値の上昇曲線が急となり今エネルギーが必要なスポーツ選手などに向きます。年寄は米が良いでしょう。またミネラルはバランスが大切です。塩分でもアクの成分でも必要ですが、摂取のし過ぎによって腎臓に負担をかけてしまいます。
粘り強い肉体を形成したいのであれば、まずは食べ物の種類や形にこだわって食べていくことが重要だと思います。
話は大きく変わりますが、次に食息動考の息の部分です。
息はつまり呼吸を意味します。吐く事を呼気、そして吸う事を吸気といい呼吸と云いますが、息を吐く事が先にしないと、吸う事が出来ないから、まずは息を吐くのです。
吐く時には副交感神経が作用し、吸う時には交感神経が作用します。
つまり呼吸の仕方によって自律神経を整えることも乱すことも出来るという訳です。
緊張症の方にはゆっくりと息を吐く事をお勧めしますし、アレルギー症状の方には吸う事を意識してもらえば、自律神経は最短で約3週間で変化を起こすとされていますので、血液成分の変化を期待する事さえ可能です。
呼吸ってすごく大事なことなんですね。
そして次に動く事ですが、汗のかかない動きとかく動きがあります。
汗のかかない動きは遅筋と云われるような筋肉が活躍し、汗のかく動きには速筋と云われるような筋肉が主役で使われます。
筋肉はその他にも心臓や血管など広く様々な種類がありますが、骨格筋について限定して述べれば、汗のかかない動きには関節の保護作用が生まれてきます。また汗のかく動きでは肺や血液の循環を促進して健康を増進する作用があります。
ですから、どちらも半分半分に必要な動きです。あまり激しい動きばかりだと関節が摩耗してしまいますので、何事ともほどほどで充分です。
そして最後は考える事ですが、前回の記事でも書いたことですが、東洋医学的には食べる成分によって思い煩ったり、憂いたり悲しんだりしてしまいます。これは五臓六腑にどれだけ栄養が行き届いているかによって考える成分や性格が変わってくることを意味します。
さすがにこればかりは、問診と身体所見の観察によってでなければ分からないことですので
何とも言えませんが、脈の強さであったり、声の艶や張り、声量がどのくらいか?皮膚の色や舌の状態を鑑みて五臓六腑の調整をしていかなければ好循環は生まれてきませんので、一度診せていただく必要があります。
良いものを食べていても、しっかり運動していても、気血の好循環をしていなければ必ず不安や不調が起こってきます。
これを整えていくことが東洋医学の考え方の基本であり、治療の妙技でもある訳です。
今日も長々と書いてしまいましたが、最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。もっと詳しくお聞きになりたい方は治療院にお越しください。
それではまた
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